研究事例

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PETとPVCの混合物を分離する

PET(ポリエチレンテレフタレート)とPVC(ポリ塩化ビニル)は、比重がほぼ同じで水浮選のような方法では分離できず、また溶媒を使う方法もその残液の処理など困難な問題を伴うため、これらの混ざったプラスチック廃棄物からの分離は容易ではありません。
PETとPVCの混ざったものを約60℃〜100℃、約16〜20MPaの超臨界二酸化炭素流体で処理を行うと、PVCだけが発泡して白色の不透明な状態に変化します。このようにして選択的に発泡させたPVCは、水に浮かせることで簡単に分別することができます。

乳精中の脂肪球皮膜物質からの塩類や各種成分の除去

チーズやカゼイン製造の副産物として得られるチーズホエー(乳精)の中にはタンパク質と脂質類の複合化合物、無機塩類を含んでいます。
45〜55℃、30〜40MPaのエントレーナーを含む超臨界二酸化炭素で、チーズホエーに塩化カルシウムなどを加えて得られる凝固物を50〜80分間抽出することによりコレステロール・脂肪酸トリグリセライド・リン脂質などの物質が抽出できます。

漢方生薬からのバイカリン、バイカレインの分別、精製

医薬品原料として漢方生薬に含まれる生理活性物質が注目されていますが、これらの物質は物理化学的性質が極めて類似しているため分離・精製が容易でなく、工業的規模の技術開発が望まれています。
オウゴンからアルコールで抽出されるバイカリン・バイカレインは抗アレルギー剤として用いられ、HIVにも効果があるといわれています。これらの混合溶液をエントレーナーとしてのエタノールを含む超臨界二酸化炭素流体で処理すると効率良く分離・精製ができます。

使用済放射燃料溶解溶液などから硝酸を抽出

原子カ発電炉の使用済核燃料を溶解した硝酸溶液などを60〜80℃、10〜20MPaの超臨界二酸化炭素流体で連続的に抽出すると、30分ではほぼ完全に放射性物質を抽出し、5時間ではほぼ完全に硝酸を抽出することができます。
このように超臨界を用いると効率良く危険な放射性廃棄物の処理を行うことが出来ます。

化粧品などの成分を効率よく分析する

例えば化粧品のような高級脂肪族系の炭化水素・高級粗脂肪アルコール・高級脂肪族エステル・高級脂肪酸・高級脂肪族系非イオン性界面活性剤などの混合物を、超臨界を使うことで効率よく分析することができます。
シリカゲルを充填した分離カラムに超臨界二酸化炭素を流通させ、分析対象の化粧品を供給して吸着させた後、いろいろな有機溶剤を水に溶けにくい方から順番に流すことによってそれぞれ異なる成分を分別することができます。従来のカラムクロマトグラフによる分析に比べて、多量の溶剤がいらない、短時間で済むなどの優れた特徴があります。

電子写真感光体顔料の精製

電子写真感光層に用いられる有機感光性顔料は、一般的には殆どの有機溶剤に不溶性です。そのため再結晶法や再沈殿法等の精製ができません。
しかし超臨界技術を用いると、短時間で効率良く精製ができ、不要な成分を除去することができます。
例えば、スーダンレッド、銅フタロシアニン等の感光性顔料を、31.1℃以上、7.3MPa以上の超臨界二酸化炭素で処理・精製した顔料は従来の精製法の感光性顔料以上の電子写真特性を持つことが知られています。