研究事例

抽出

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漢方薬から脂溶性の有効成分を取り出す

最近では、漢方生薬など植物中に含まれる脂溶性生理活性物質の優れた抗菌性や抗酸化性が注目されはじめています。
しかし、これまではそれらを取り出す良い技術はありませんでした。
生薬からアルコールなどで抽出された脂溶性有効成分を含む有機溶剤溶液に、比較的低温低圧の超臨界二酸化炭素を流すことにより有機溶媒が二酸化炭素に置き換わり、有機溶媒に対して溶解性の低い脂溶性有効成分が析出します。
さらに残液に比較的高温高圧の超臨界二酸化炭素を流すことにより、中程度に溶解する有効成分が分離されます。
このように二段階の超臨界処理を行うことにより、効率良く脂溶性生理活性物質を分けて取り出すことができます

アトピー性皮膚炎予防米の製造

米の油脂成分の中にはアトピー性皮膚炎を起こすアレルゲン成分が含まれています。予め米をエタノール等のアルコールと酢酸等を含む水に浸漬し、15〜25MPa、35〜44.5℃の超臨界二酸化炭素で抽出を行うことで、米のでんぷん質を損なうことなく、効率良く、ほぼ完全にアレルゲン成分を抽出除去することが出来ます。なおこれとほぼ同様の方法で無洗米もつくることが出来ます。

遊離脂肪酸を低減して風味・食味を向上した脱脂食品素材

米胚芽・胚芽米・小麦胚芽は神経伝達物質であるγ−アミノ酪酸の前駆体であるグルタミン酸が高濃度に含まれています。米胚芽等にはリノール酸やリノレン酸などの脂質も同時に含まれているのでこれを除去するために有機溶媒による抽出法が用いられています。しかし、その方法では除去能力が低いため、脂質が酸化されて褐変するという問題があります。 これを31℃、7.3MPaの超臨界付近またはそれを超える状態の二酸化炭素で抽出を行うことにより脂質を効率良く除去することができます。さらに脂質を十分に除去した胚芽米などをpH5.5〜6に調節すると、グルタミン酸がγ-アミノ酪酸に変化します。このようにしてできる胚芽米などは褐変することはありません。

卵黄から良質のリン脂質組成物を抽出

乾燥卵黄をアルコール抽出することで得られるリン脂質(レシチン)は、酸化・重合等の反応が起きて褐色になるという問題があります。これはリン脂質に含まれるグルコースの割合が多いために起こる現象です。
そこで予めグルコシダーゼで脱糖して乾燥した卵黄を作り、これを40℃、20MPaの超臨界二酸化炭素で処理した後常温常圧に戻すことにより、コレステロ一ル及び中性脂質の含量の少ない乾燥卵黄を作ります。次にアルコールによる抽出を行ない、得られた抽出液を減圧してアルコールの除去すると、褐変を起こさない良質の卵黄リン脂質を得ることができます。
卵黄リン脂質にはコリンが約87%含まれ、記憶力増強、アルツハイマーや老人の痴呆予防に効果があるといわれています。

醤油の香気成分の回収

濃口醤油を20MPa,40℃の液体状態の二酸化炭素に導入すると、抽出カラム装置に香気成分が抽出されます。
次にこの抽出カラムからの香気成分を含む二酸化炭素液体を減圧して、気化し吸収カラム内の吸収液(エタノール、水、グリセリンの混合液)の中にバブリングさせると、吸収液に醤油の香気成分が回収されます。
回収した香気成分は、嗜好飲料類、各種煮汁、果汁などに使用できます。従来からある水蒸気蒸留などでは回収した香気成分が変質したり、また回収の方法が面倒でしたが、超臨界技術ではこのような問題がなく効率良く行うことができます。

鰹節の香気成分の回収

鰹節粉末中の香気成分を超臨界状態の二酸化炭素に溶解・移行させ、この香気成分を含む二酸化炭素を気化させながらグリセリンを含む水やエタノールもしくはエタノール水からなる吸収液に吸収回収すると、香気成分だけを取り出すことができます。
この技術はカレー粉、とうがらし粉、松茸・椎茸などの乾物、コーヒー、緑茶や果汁などの香気成分の抽出・回収にも利用できます。超臨界技術では、従来からある水蒸気蒸留などで起こる回収した香気成分の変質や回収の方法が面倒であるといった問題がなく、効率良く行うことができます。

ドライフルーツフレーバーの製造

レーズンの粗砕物を50℃、20MPaの超臨界状態の二酸化炭素で抽出し、抽出ガスを分離塔に導き40℃、5kPaの条件で分離すると、レーズンの香気成分が効率良く得られます。
このように超臨界技術による抽出方法で得られるドライフルーツフレーバーは高品質で嗜好性が高く、食品やたばこ用のフレーバーとして利用されます。

リコピン油の製造

トマト・人参など、水分を多<含む原料から力ロチン系色素の一つであるリコピン油を取り出すには、先ずアルコールで予め脱水し、脱水物を35〜80℃、圧力25〜30MPaの超臨界二酸化炭素で抽出します。
抽出したリコピンを分離槽の内壁に付着させ、サラダ油にリコピン油を溶解することにより、従来の抽出法と比較して遥かに高収率でリコピン油を回収することができます。

杉の皮から酸化防止剤の精製

杉の葉、皮及び心材には天然酸化防止剤であるフェルギノールが含まれています。
粉砕した杉の皮を抽出器に入れ、60℃、20MPaの超臨界二酸化炭素で抽出すると、濃度5.5%のフェルギノールが抽出されます。
次にこの抽出物を40℃、10MPaの超臨界二酸化炭素で抽出すると濃度が20%に上昇します。さらに60℃、15MPaの条件下では、この抽出液から約78%の高濃度でフェルギノールが抽出できます。

魚油からEPA,DHAなどを分別回収

いわし油中の高度不飽和脂肪酸類(EPA-エイコサペンタエン酸、DHA-ドコサヘキサエン酸など)をエステル化し、これを硝酸銀水溶液で処理すると、不飽和度の高い脂肪酸のみが硝酸銀水溶液と錯体を作って硝酸銀水溶液に溶解します。次にこの溶液を40〜60℃、10〜25MPaの超臨界二酸化炭素で抽出すると、最終的には殆どすべての不飽和脂肪酸エステル成分が回収されます。超臨界液体としては二酸化炭素の他に、エタン・エチレンなどの気体も用いることができます。このように超臨界では従来の抽出法に比較して極めて効率良く不飽和脂肪酸を抽出することが出来ます。

エンジン冷却液からグリコール類を抽出・回収

エチレングリコールを含むエンジンの冷却水を、メタノールまたはエタノールをエントレーナーとして含む50MPa、80℃の超臨界二酸化炭素で抽出を行うことにより、効率良くエチレングリコールを抽出することができます。
また、このように被処理物が液体の場合には、ケイソウ土やセラミックス粉などを入れて二酸化炭素との接触面積を広げると、更に効率良く抽出が行えます。

焼却炉飛灰中の重金属類の除去

廃棄物を焼却する際に発生する飛灰の中に含まれているクロム、鉛、カドミウムなどの重金属を除去するために超臨界技術を用いることが出来ます。
先ずこの飛灰に少量の酸を加えて重金属を溶解し、錯化剤を加えて重金属錯体に変えます。この錯体を超臨界二酸化炭素流体で処理し、超臨界流体中に重金属錯体を抽出後、減圧すると重金属が回収されます。

使用済み核燃料から希土類元素の抽出分離

原子カ発電所の使用済み核燃料を溶解した硝酸溶液を、エントレーナーとしてリン酸トリブチル等の中性有機抽出剤を含む超臨界二酸化炭素で抽出します。
その後、超臨界流体を常温・常圧にして二酸化炭素を気化させると、硝酸溶液中にランタン・セリウム・サマリウムなどの希土類元素のみを回収することが出来ます。

使用済みの核燃料からの白金族の分離・回収

使用済みの核燃料にはウラン・プルトニウム・ロジウム・パラジューム等の白金族元素が相当量含まれています。
これらの再処理水溶液や再処理有機溶液をホスフィン類・ジアルキルサルファイド類・一酸化炭素等の錯化剤で処理すると、白金族元素は錯体を作ります。
この錯体に40〜80℃、15〜35MPaの超臨界二酸化炭素を接触させて錯体を抽出後、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等を含むアンモニア水溶液に超臨界状態を保った状態で吹き込み、超臨界以下の圧力に下げると白金族錯体はアンモニア水溶液の中に回収されます。

ポリエチレンなどから有機添加剤を抽出

ポリエチレン・ポリプロピレンなどのオレフィン重合体には酸化防止剤・紫外線吸収剤・滑剤・フィラーなどの有機物が添加されています。
用途に応じてこれらの添加剤の全てまたは一部を除去する必要があります。
このような場合に、オレフィン重合体を100〜150℃、18MPaの二酸化炭素及びエタノール・ジクロロメタンからなる混合物超臨界流体で抽出すると、有機添加物の抽出を選択的に行うことができます。

押出し成形体から不要になった樹脂を選択的に除去

溶剤不溶性のポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン・ポリカーボネート等の溶剤可溶性樹脂の混合物を熔融し、その中に金属やセラミック粉末を分散して射出または押出し成形法等で成形体を作ります。
次にこの成形体を超臨界二酸化炭素で処理すると、ポリスチレンやポリカーボネート等樹脂が成形体から選択的に除去され、ポリオレフィン系のポリマーだけがファイバー状となって成形体中に残るため、強い強度の成形体製品を歩留まり良く得ることができます。

長期間の保存に耐える煉りからし

マスターシード原料から変色の原因となる水溶性や油溶性成分を選択的に除く方法として、超臨界抽出が有効です。
水を加えてペースト状にした粗挽きマスターシードを313℃、73MPa以上の超臨界二酸化炭素ガスで抽出すると、マスタード配糖体が含まれた状態で油溶性成分が抽出分離され、残存液には辛味成分が残ります。
次に分離液からマスタード配糖体を回収し、一方残存液には加水することで水溶性成分が除去され、辛味成分のみが残ります。
このようにして得た残存液にマスタード配糖体、ビタミンC、食用油等を添加して得た煉りからしは、長期間の保存が可能な優れたものです。

コンニャクからの異臭成分を除去する方法

原料コンニャクに異臭成分として含まれているトリメチルアミンを除去する方法として水洗法やアルコール抽出法が知られていますが、長時間かつ大量の抽出液が必要で、効率やコストの面に問題があります。
エタノールに浸漬したコンニャク乾燥粉末を35〜50℃、15〜25MPaの超臨界二酸化炭素で抽出すると、トリメチルアミン・エタノールが抽出・分離され、コンニャクマンナン成分を損ねることなく、極めて短時間で異臭成分を除去することが出来ます。

キャラウェイなどから取る消臭剤

キャラウェイ、ハマボウフウなどの葉・茎・根には消臭成分を含んでいます。これらを抽出して、食品や医薬品の消臭剤として用いられていますが、この消臭剤には原料植物の特有のにおいが残っています。
このにおいを除去するために二酸化炭素流体を用いる超臨界技術が用いられます。この処理により完全無臭の消臭剤を得ることが出来ます。

未利用海藻から取るEPAの原料

未利用海草の褐藻コモングサには血栓症・脳硬塞・心筋梗塞等の防止作用など、生理活性のあるエイコサペンタエン酸(EPA)の原料であるパリナリン酸が含まれています。
凍結乾燥により破砕したコモングサをクロロフォルムとメタノール混合溶媒で抽出し、一連の化学処理を行った後、硝酸銀錯体となった脂肪酸をクロロフォルムに溶解して25MPa、40℃の超臨界二酸化炭素で抽出すると約70%のパリナリン酸が得られます。