超臨界流体とは? Supercritical fluid
物質の状態変化として、固体/液体/気体が知られてますが、さらに圧力と温度を上げていくと、ある時点で液体でも気体でもなく、両方の特徴を持つ「超臨界流体」になります。
この超臨界流体は、液体のような高い溶解性と、気体のような大きな拡散性を示し、圧力と温度をコントロールして通常では起こり得ない反応を進めたり、溶解しない物質を溶解させたり、分離させたりできます。
二酸化炭素や水、アルコールなどの超臨界流体で、それぞれの特性を最大限に活かし、食品・エネルギー・環境・医療など幅広い分野への貢献が期待されます。
超臨界水 Supercritical water(H2O)
水の臨界点は 374℃、22.1MPaと非常に高温高圧で、水分子の動きは激しく、気体分子と同様の大きな運動エネルギーを持ち、かつ、液体に匹敵する高い密度を兼ね備えた非常にアクティブなものです。
超臨界水は、反応において重要なパラメータである電気伝導率やイオン積などが大幅に変動し、水そのものが酸や塩基の作用を示し、
有機物は良く溶けるが無機物は殆ど溶けない(油は混ざるが食塩は溶けない)といった、通常の水とは全く異なる性質を示します。
非常に高い温度で熱分解と加水分解が同時に、かつ、急速に起こるため、従来の触媒や酸塩基を添加せずに殆どの有機物は水や二酸化炭素、窒素などに分解します。
<物性比較>
特性 | 気相 (水蒸気) |
超臨界相 (超臨界水) |
液相 (水) |
密度[kg/m3] | 1 | 100~1000 | 1000 |
粘度[mPa・s] | 0.01 | 0.1 | 1 |
拡散係数[m2/s] | 10-5 | 10-7~10-8 | <10-9 |
熱伝導度[W/mK] | 10-3 | 10-3~10-1 | 10-1 |
引用:荒井康彦監修,超臨界流体の全て,2002
事例)PCBやダイオキシンなどのように格別に安定とされる化合物の分解、無毒化が知られてます。
超臨界二酸化炭素 Supercritical carbon dioxide(CO2)
二酸化炭素の臨界点は31℃、7.4MPaと比較低温で、熱に弱い成分や揮発性の高い香気成分の抽出、あるいは、熱に不安定な機能性素材の表面処理や乾燥に有用です。
二酸化炭素が不活性で無害な非極性ガスのため、ヘキサンやクロロホルムなどに替わる安全な抽出媒体として知られてます。
超臨界二酸化炭素は、温度や圧力を変えることによって溶解度パラメータ(SP値)が変わるため、超臨界二酸化炭素のみで選択的に成分抽出や分画をすることができます。
引用:荒井康彦監修,超臨界流体の全て,2002
事例)
抽出:超臨界二酸化炭素の温度や圧力によって溶解度パラメーター(SP値)が変わり、植物細胞に含まれる有用成分を選択的に抽出分離することができます。
洗浄乾燥:超臨界二酸化炭素は液体のような表面張力がなく、微細構造のパターンを変形させずに瞬時に洗浄や乾燥ができます。
例)シリコンウエハー、カテーテル、エアロゲルなど
超臨界クロマトグラフィー(SFC):超臨界流体を移動相に用いたクロマトグラフィーで、従来のHPLCよりも高速で分離することができます。